Courseraでファンドレイジングを受講してみた(2)

 

Courseraでファンドレイジングを受講してみた(1) - 始まりの景色

の、続きです。

"Fundraising and Development Foundations"のコースを受講しました。

「ファンドレイジング基礎知識」という内容で、網羅的に学ぶことができました。印象に残ったことをメモ。

寄付集めの4つのプロセス 

講座では寄付集めのプロセスを4つのフェーズに分けています。

  1. Identifying:Prospective donor(寄付候補者)を調査すること。寄付候補者を"warm"、"lukewarm(生温かい)"、"cold"と、団体への興味、反応についての温度感で分類。
  2. Cultivating:関係を構築していくこと。大学で言えばキャンパスツアーに参加してもらうことなど。この場合、団体のミッションに直接関わりのない、例えば「懇親会」といったイベントは含まれない。
  3. Soliciting engaged donors:積極的に寄付をお願いすること。Prospective donorからValued donorへの転換期。ここではPledge payment(一定期間中に分割払いすることを約束すること)による大口寄付について、
    "Not now" is better than a hard "No".(キツい「ダメ」よりも「今ダメ」の方が良い)
    に表されるように、pledgeによる寄付の約束を受けることが重要である。
  4. Stewardship:寄付の使途と説明・報告するすること。スチュワードシップはドナー・リレーションとセットで語られることが多く、今回もセミナー後半でドナー・リレーションが出てきます。一番関心のある分野につき、この項目の詳細は別途。

プランド・ギビング

プランド・ギビング(Planned Giving)とは、寄付者が、遺言を含めて、自分の人生を通じた寄付について計画的に実施すること。米国でシニア層の寄付が進む要因のひとつが、このプランド・ギビング(信託制度を活用した寄付が進みやすくする仕組み。)である。1969年に米国で生まれ、税制上のメリット、特に有価証券や土地の寄付しやすさ、運用益の配当が受けられる制度設計などにより、寄付の促進に大きな貢献をしている。

引用元:プランド・ギビングとは - Weblio辞書

日本では税制上の制限により、米国型のプランド・ギビングは設計できないため、「日本型プランド・ギビング信託」があります。制度は異なりますが、寄付者がプランド・ギビング先を選ぶポイントは日米共通と思われるためメモ。「受け入れ団体であること」「信頼性が高い団体であること」「長期的関係を築いていく体力のある団体であること」。

大学に当てはめると「信頼性」「長期的」については、ほとんどの大学が該当すると思いますので、あとは「受け入れ」体制を整えて表明すれば良いわけです。税制など難しいですが、引き続き知識を深めていきたい分野です。

キャンペーン

キャンペーンは3種類。目的と目標額があり、だいたい5〜10年間にわたり行われるものをキャンペーンと呼びます。

  • Capital campaign:建物などいわゆるハコモノ
  • Endowment:運用益を活用する基金
  • Comprehensive:包括的

最後の「comprehensive」についてはイマイチ想像できなかったため、他の資料から補足。

A comprehensive fundraising campaign is not a new idea and coordinates multiple campaigns into one. This type of campaign is more strategic than a typical capital campaign. It focuses an organization’s energies into one campaign with multiple goals and revenue sources. 

引用元:The Many Benefits of a Comprehensive Fundraising Campaign - Armstrong McGuire

ざっくりと訳すと、包括的キャンペーンとは真新しいことをするのではなく、既存の複数の目標や収入源を一つに集中させること。

 

なぜキャンペーンをするのでしょうか?

「今、寄付しないと」「新規寄付者の開拓」などある中、「スタッフやボランティアの士気を高めるため」というのが印象深く残りました。この後の内容でも触れられますが、キャンペーンにボランティアの存在が欠かせない、というのが米国では常識のようです。

キャンペーにも4つのフェーズがあります。

  1. Pre-campaign:キャンペーンの計画段階。目標額を設定したり、優先順位を検討したりする。ドナーピラミッドによる戦略を立てるのもこのとき。
  2. Quiet Phase:静穏期。ではあるものの、既存寄付者にキャンペーン告知を始めて大口寄付を求めるなど、この段階で目標額の40-60%を集める、とのこと。え、そんなに!?と思ったのは私の経験が足りないからでしょうか。また、この時期にボランティアのスキルを測っておくのだそう。
  3. Public Launch:目標額の40-60%を集める頃に、「私たちはキャンペーンをしています」とアナウンス。ボランティアに積極的に関わってもらう。ロゴマークを公開するのもこの時期。団体が勢いに乗っていることを強調する時期。成功することを公にアピールするのがローンチの目的。そうなんですね・・・
  4. Closing Campaign:目標額を超えたとき、あるいは設定したキャンペーン期間が終了するとき。これまでの寄付者に感謝することはもちろんのこと、「こういう成果がありました」「成功裏に終わりました」とキャンペーンによるインパクトを表明。対外的に前向きな評価で終わることが重要。

これらのキャンペーンを進める上で重要な要素として「Economic Factors」がありました。新型コロナウイルスで経済活動を後回しにせざるを得ない現在は、キャンペーンを積極的に続けない方が良い時期と言えます。

Couseraには他にもファンドレイジングのコースがあるようなので、引き続き受講していきたいと思います。

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Photo提供者:Suzy Hazelwood