ネコ治療薬研究への寄付がクローズアップされた3つの理由

f:id:izmy2009:20210717195436p:plain

大学関連のファンドレイジングのニュースが入ると書かずにはいられない、謎の使命感に燃えるizmyです。

約半年前の学生食堂山食クラファン(お時間あればこちら↓も読んでください!)以来の、私的ビッグニュース。

izmy2009.hatenablog.com

 

 

7月11日から16日にかけて、東京大学の宮崎教授らが進めている猫の腎臓病の治療薬開発の研究がクローズアップされ、東京大学への寄付が殺到したことがニュースとなりました。

SNSを中心に話題となったニュース

発端は時事通信のインタビュー記事。

7月11日付で「『ネコの宿命』腎臓病の治療法を開発 寿命が2倍、最長30年にも 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー」が配信されると、SNSを中心に話題となり、東京大学への問い合わせが増えました。

www.jiji.com

寄付が集まり出したところにメディアが後追い記事を出します。

朝日新聞デジタル東大ネコ研究に2日余りで寄付3千万円 担当者「驚き」

・読売新聞オンライン:飼い猫の腎臓病の治療薬開発、東大に「深い愛情」で寄付殺到…5日間で7400万円

時事通信ネコ治療薬研究に多額の寄付 加藤官房長官「着実な進展期待」

Yahoo!ニュースに掲載され、注目に拍車がかかりました。

 

官房長官の定例会見では寄付文化について言及

さらに、16日には加藤官房長官の定例記者会見で取り上げられました。

・大学における研究に対し、その趣旨に賛同して短期間で多額の寄付が集まったことは大変喜ばしい。

・他方で、日本の大学の収入における企業や個人からの寄付の占める割合は、欧米に比べて低い。

・政府としてはより多くの寄付を促すため、国公立大学法人に対する修学支援、若手研究者支援のための寄付の税額控除の導入、私立大学が行う受託研究にかかるる企業の法人税の非課税措置の拡充などの税制改革にも取り組む。

・今回の研究が着実に進展することを期待するとともに、引き続き寄付文化が広がるよう取り組みを進めていきたい。

www.jiji.com

 

このようにクローズアップされた理由を3つ挙げます。

理由その1:愛猫家の情状的共感が喚起された

一般社団法人ペットフード協会が2020年12月に発表した「2020年(令和2年)全国犬猫飼育実態調査」によると、全国の猫の推計飼育頭数は約960万頭。

犬と並んで身近なペットである猫。猫の平均寿命は15.45歳で、猫を飼ったことのある人は、病気になった猫を看病し、そして猫を看取った経験がある人も多くいることが伺えます。猫の多くが高齢になると腎臓病を発症。そして、腎臓の機能は一度失われると回復せず、長く苦しむネコも少なくないそうです。

愛猫家の心を痛める問題への取り組み、そしてインタビューにある資金確保に向けて奔走している、という内容が、愛猫家のハートに火を点けました

実は、ある会社がスポンサーになってくれて、治験薬を作り国から薬としての承認を受ける治験を行うめどが立つところまでは、数年かけていっていました。ところが、新型コロナウイルスのせいで社会全体が経済的な打撃を受けたことで、プロジェクトはいったん中断しています。

(引用元:https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070800906&g=soc

 

他国の事例ですが、 英国の寄付に関する調査によると、社会課題別の寄付の割合では、「Animal Welfare (動物福祉)」と「 Medical Research(医学研究)」は常に上位にあります。言い換えれば「寄付が集まりやすい人気の社会課題」です。今回の事例では、この2つの組み合わせによる相乗効果があったのではと推察されます。

 

理由その2:SNSで拡散された

7月16日にTwitterで配信された朝日新聞の記事は7月19日現在1.5万リツイート、著名人からの研究に期待を寄せるコメントが7月19日現在2.2万リツイートなど、東京大学のニュースはSNSで拡散されました。

寄付の仕方を画像つきでお知らせする人、他の人のツイートを読んで寄付をしましたという人など、キーワード検索をすると研究に対する期待の高さと寄付への熱量を感じました。

 

Twitterまとめサイトtogetter

togetter.com

 

 ・宮崎教授の新刊を購入すると売上の一部を東京大学に寄付することを表明する仮想店舗

 

・動画収益を東京大学に寄付すると表明するYouTube動画 


www.youtube.com

 

 

理由その3:東京大学で迅速な受け入れがあった

 東京大学基金では、当初、宮崎教授らの研究への専用寄付フォームはありませんでした。

7月11日にニュースが配信され話題となった翌12日には、専用申し込みフォームを作成。

さらに7月15日には宮崎教授からのメッセージを掲載しました。

utf.u-tokyo.ac.jp

 

申し込みフォームだけでなく、TwitterFacebookへのシェア用ボタンが設置され、SNSへのシェアがしやすいように配慮がされています。応援コメントを読むと寄付の気持ちを後押しされます。

東京大学の迅速な対応が話題に拍車をかけ、より多くの人の関心を集めたのではないでしょうか。 

 

今回の寄付事例、何ヶ月か後には大学チャプターの勉強会で振り返りをお聞きしたいです。