共感の連鎖をつなぐ〜島根大学のケース

大学進学のために一人暮らしを始め、近所のスーパーに食料品を買いにいった約30年前のこと。

お米を買おうとして想像以上に高く「・・・買えない」とションボリして、さらに日が暮れて街の様子が変わって道に迷ってしまい、泣きながらアパートに帰宅。高校時代の友人に嘆くと、友人から宅配便でお米が送られてきました。あのときは嬉しかったよ、あっちゃん!

・・・というエピソードを思い出した、島根大学のニュース。

の、前に。島根大学といえば。そう、髭男!


島根大学Promotion Video

"愛する君の声が〜"♪

髭男の軽快なメロティー"Sweet Tweet"に乗って、島根大学の施設や島根県の観光名所が紹介されるプロモーションビデオ。

はい、2:55で一時停止!

ここに映る「学生市民交流ハウス」が今回の舞台です。

教職員有志による学生への食料品寄付

島根大学で食料品を集めて学生に配布する試みについて、初めて紹介されたのが5月7日。私が所属している日本ファンドレイジング協会大学チャプターのメンバーの方からお知らせいただきました。

www.shimane-u.ac.jp

新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて,アルバイト収入が減って家計が苦しくなってきている本学の学生のために,お米を集め,配布する試みがこのたび教職員の有志が発起人となり行われました。 4月27日(月)に教職員対象に募集したところ,30日(木)には600㎏以上のお米が集まり,それ以外にも缶詰やレトルトカレー,インスタントラーメンなどたくさんの食料が集まりました。

引用元:島根大学のニュース記事

掲載当時、心温まるニュースだなぁと感動して読んでいました。

地元企業・団体からの支援

そうしたところ、続報が。

第2弾では,教職員や多くの企業・団体・保護者・地域の方から予想以上の寄付があり,お米2t以上、野菜、缶詰、インスタントラーメンなどたくさんの食料品が集まりました。 

引用元: 島根大学のニュース記事

「報道等で困窮している学生がいると聞いています。可能な限り支援したいと思っています。希望を持って勉学に勤しんでほしいです。」 

 引用元:島根大学のニュース記事

報道の影響力

この記事に出てくる「報道」について、調べたところ、朝日新聞のweb記事を見つけました。

「島根)コロナで困窮学生にコメ配布 島根大教職員が寄付:朝日新聞デジタル

www.asahi.com

大学チャプターメンバーの方に伺ったところ、同じ頃に、地元の新聞社「山陰中央新報」の紙面にて、島根大学の学生の窮状について大きく掲載されたそうです。

報道の影響力は、大きいですね。

さらに広がる支援の輪

支援の輪はさらに広がります。

素晴らしい点その1:学生の困窮をいち早く社会的課題として対応したこと

この一連の流れについて、認定ファンドレイザーの立場から素晴らしいと思った点を改めてまとめます。

2年前に参加したFRJ2018のゼネラルセッションに登壇した駒崎弘樹さんの「こども宅食」「障害児保育」など、ご自身の活動の意義についてのお話を思い出しました。

どちらも共通するのは、「身の回りにある、一見、個人の困りごとに見えるものを社会的課題として認識し、解決することの大切さ」。

izmy2009.hatenablog.com

 今回も、教職員が米などの食料品を集めて学生に寄付することにより、「日々の食費の負担に困っている学生がいる」ことを、"個人の困りごと"とせず、いち早く"社会的課題"="教職員が解決すべき課題"ととらえ、行動に移したこと。単なる「良いニュース」で終わらず、報道機関にて新聞記事として掲載されたことが、社会的課題としての注目度の高さを物語っていると思います。

素晴らしい点その2:「共感メッセージ」階層のステップアップ

島根大学のニュース記事を拝読すると、支援者から「報道で知りました」という場面が何度かありました。

認定ファンドレイザー講座のテキストに「3階層のメッセージ化」があります。

  1. 第1階層のメッセージ:活動対象の受益者に生じる変化
  2. 第2階層のメッセージ:その団体の事業分野、地域社会に及ぼす変化
  3. 第3階層のメッセージ:国、行政、日本社会、日本の価値観などに及ぼす変化

今回の件は、一見、「受益者」=「学生」のため、に見えます(第1階層)。これが報道により「学生のために私たちにできる支援の形がある」(第2階層)ということを多くの人が知ることができたのではないでしょうか。そういう意味で、第1階層から第2階層へステップアップしたと考えます。

素晴らしい点その3:効果的な「感謝のメッセージ」

2回目の食料寄付の記事では、付箋に貼られた学生からの感謝メッセージが写真で紹介されました。

また島根大学では以前から、こまめに記事を更新しているようで、この"まめさ"で、支援者からの「激励メッセージ」、学生からの感謝のメッセージも「記事」として掲載しています。

 

大学長からの謝辞については大学ニュース記事にもありますが、ここでは山陽中央新報のweb記事をご紹介。

「困窮学生支援に島根大学長が感謝」(山陰中央新報社)

www.sanin-chuo.co.jp

この「感謝メッセージ」を読んで、さらに支援の輪が広がることでしょう。

 

今回、「ファンドレイジングとは共感の連鎖をつなぐこと」を再認識しました。

 

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www.jfraac.org