ファンドレイジング・日本に参加しました(5)〜セッションふりかえり

2019年9月14日(土)・15日(日)にかけて行われたファンドレイジング・日本2019

2日間で7つのセッションに参加しました(ゼネラルセッションとクロージングセッションを除く)。

この中で印象に残ったことをつらつらと。

共感の体験を“再発明”するテクノロジーと次世代サービス

1日目の朝はインスパイア!ということで、若手社会起業家として注目されているNPO法人WELgee代表理事の渡部さんとアクセンチュア株式会社の山口さん、佐藤さんが登壇するセッションに参加。

「ビジネスセクターから見たソーシャルセクター」という切り口が面白かったです。横文字多めで理解できたか不安ですが。

働き方改革で生まれた可処分時間。これは社員の成長につながっていますか?ソーシャルセクターへのSkill Giving(プロボノ活動)こそが可処分時間再配分(社員の成長)のキラーコンテンツとなる、とのことでした。

WELgeeではプロボノを積極的に活用しているそうです。最初に、「スキル」だけでなく「人生に関わること」「お互いに何を得られるか」をお互いに確認している、とのこと。プロボノと聞くとつい「その人の空いている時間に何がやってもらえるのか」と想像していた自分には「プロボノをする側にも何か得られないと動機づけにならない」と再認識しました。

また、「ソーシャル・セクターはイノベーティブである」とも。なぜなら、効率性を重視するビジネスでは10のアイディアのうち2〜3に絞るところを、WELgeeでは10人に対し10とおりのアイディアを実践しているから。そういう見方もあるのか、と新鮮でした。

パネルディスカッションでは、渡部さんから「表面的共感ブランディング」への疑問が提示されました。難民問題を扱っている団体だからこそ、「よりセンセーショナル、よりかわいそうへの傾倒」することへの警鐘を鳴らしています。わかりやすい共感アプローチではなく、本質的な課題に気づいてもらうことが重要。「どういう基準で寄付するか?自分のお金がどういうインパクトをもたらすか?、という価値観をわかっていない人が多いのでは」と語っている姿が印象的でした。

寄付という行為を「施し」から「社会的課題の解決」へ。そこにはソーシャルインパクトの視点が欠かせないと改めて感じました。

ソーシャル・セクターを科学する

学術的な話が聞ける貴重なセッション。日本NPO学会との連携セッションでもあります。

坂本先生、今年も「NPO・市民活動団体はより左派的な"政治性が強い団体"と認識され、忌避される傾向にある。」という衝撃的な(?)研究結果を発表。「一方で、一般財団・一般社団は中立のイメージ」なのだそう。

また社会貢献意識が高まる一方で、NPOへの参加は増えておらず参加意欲も低い、という消極的な姿勢が明らかに。加えて「日本人は公助(税金)も共助(寄付金など)にも消極的な姿勢であることが明らかになりました。」というのも意外に感じました。

この日の数日前に現代ビジネスonlineに掲載した記事が注目されています、とのこと。

gendai.ismedia.jp

FRJ2019に参加する人は当然ながら熱心な人が多いわけで。熱心ではない人々の存在を意識して、そういった人々の関心をどう惹きつけるか。まだまだ課題は多そうです。

続いて小田切先生。「ミッション・ドリフト(組織の活動が公式的な目的から逸れること)」がテーマでした。経験則で語られがちなNPOのミッション・ドリフトの通説について。一部の結果は通説とおりでしたが「財源を多様化すればミッション・ドリフトを抑制する」と言われていたことは、「財源が多様化するほどミッション・ドリフトをむしろ引き起こす」と通説と異なる結論となった、とのこと。

最後に中嶋先生。中嶋先生のテーマは「情報開示戦略」。どのように資金調達活動をし、アカウンタビリティ(説明責任)を果たすのか。どの利害関係者に向けた情報開示をNPOでは重要視しているのか。これを「行動の順位」×「利害関係者の順位」というマトリックスで優先順位を整理したところ、多くのNPOでは行動については「活動の成果を高める」「協働的なパートナーシップを構築・維持」を最優先し、利害関係者では「国内の他のNPO」(業界団体)が最優先という結果を発表しました。

質問では、「NPOの"政治性"だけでなく、"宗教性"などの忌避のファクターについて分析はないのですか?」という鋭い質問がありました。坂本先生から、「忌避ファクターについては、確かに、ほんのさわりの部分だけを今回は発表しています。例えば多額の寄付を集めていると忌避されるという研究結果があります。その他についてはぜひ日本NPO学会にて・・・」とのこと。他の先生方も同様に(確かに3人で1セッションなので、ほんのさわり程度しか扱えなかったはず!)「続きは次回の日本NPO学会に参加いただいて・・・」とのコメントでした。来年度のセッションも楽しみです。

その他のセッション

その他、LINE WORKS、アドボカシー、ビットコインなど、日常と違うテーマに触れることができて興味深かったです。どのセッションもほぼ満席でした。

2日間の興奮をクロージングセッションでクールダウン。明日からやることを最後に心に刻んで。

  • 意義のあるイベント開催を心がける。
  • 仲間を増やす。
  • 教育系についてはリサーチを進める。
  • とりあえず9月末のADRP(the Association of Donor Relations Professionals)2019で学んでくる。

2019conference.adrp.net

ファンドレイジング・日本の記事はこれで一区切りとします。多くの方に読んでいただき、ありがとうございました。

 

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