ファンドレイジング・日本に参加しました(3)〜大学チャプターセッション
2019年9月14日(土)・15日(日)にかけて行われたファンドレイジング・日本2019。
2日目の15日に大学チャプターのセッションが行われました。テーマは「大学チャプターが描くファンドレイジングの未来」。
大学チャプターセッション
スピーカーは𠮷田富士江さん(大阪大学)、木村昭さん(東京大学)、久保優子さん(東京工業大学)、ファシリテーターは高橋麻子さん(ファンドレイジングコンサルタント)。𠮷田さん、木村さん、久保さんは昨年度のファンドレイジングスクール同期です。
ファシリテーター高橋さん
まずファシリテーターの高橋さん(大学チャプター共同代表)から、大学ファンドレイジングの特徴の説明がありました。国立大学では運営交付金が減少しており、外部資金の獲得が急務とされています。そんな中、大学ファンドレイザーが必要とされ、注目されています。
大学ファンドレイジングの特徴をまとめると以下のとおり。
- 学生・保護者・卒業生など、すでに関わりのあるステークホルダーが多く存在する。その中で支援者との丁寧なコミュニケーションが求められる。
- 大学内外のマネジメントが求められる。様々な業務をしなくてはならない。
- 定期的に人事異動があり、専門職としてのファンドレイザーが育ちにくい。
高橋さんは「大学チャプターでは緩やかな個人レベルのネットワーキングを大切にしています。悩みを分かち合い、お互いのスキルを高め合いましょう!」と来場者に呼びかけました。
続けてファンドレイザーの「仕事のリアル」を3人のスピーカーから発表。高橋さんから「プロ!の𠮷田さん」、「オレ流!の木村さん」、「新米!の久保さん」と紹介されました。
プロ!𠮷田さん
最初に支援者の方に話を聞きたいといきなり電話をしたところ、「新手の詐欺??」と疑われてしまったとのこと。そこでまずお会いして名刺交換した人から、個別コンタクトを取るように変更。同窓会や卒業生の集まり、シンポジウムといった大学のイベントに積極的に参加しているそうです。地道な活動が功を奏して寄付者との信頼度が高まり、今では「いつもありがとう!感謝しているよ!」と寄付者から声をかけていただいている、とのことでした。
ご寄付のお願いとは「大学を語ること」。「大学はこんなことで頑張ってます!」や寄付者の出身学部・クラブの現状をお伝えすること。そして何より、「大学のファンドレイザーは、多くの方から『有難う!』と言ってもらえる本当に良いお仕事です!!」とファンドレイザーの魅力を語りました。
オレ流!木村さん
長らく商社にお勤めで、退職して大学ファンドレイザーになった木村さん。自身を「60の手習い」と呼び、知らないことを謙虚に自覚し「先人に学ぶ」「米国に学ぶ」「求人情報に学ぶ」と、とにかく熱心にファンドレイジングを学んでいます。
木村さんから見たファンドレイジングとは「多機能」。プロスペクトリサーチ(寄付マインドのある人など)、プロデューサー、ブロガー、コンシェルジュと、とにかく様々な業務と能力が求められるとのことでした。さらに、百貨店との類似性、つまり店舗販売から外商へと関係性を深めるプロセスの類似性を指摘していたのが興味深かったです。
私にとっては意外だったのは、学内認知度向上の重要性を訴えたこと。東大内部の関係者から「東大で寄付を集めているんですか?」と言われることがあるのだそうです。私はえっ!?と思いましたが、会場では大きく頷く参加者の姿が見られました。
木村さんは毎年12月に行われている「寄付月間」にも熱心に取り組まれています。現在、12大学が賛同パートナーになっており、より多くの大学が認知度向上のために寄付月間を活用してほしいと呼びかけました。
新米!?久保さん
久保さんはファンドレイジングスクールの同期で昨年度ともにみっちりファンドレイジングを勉強していますので、新米・・・??という気がしないでもないのですが。
久保さんは主に外資系または国外の企業で勤務された経験のある「国際派」。さまざまなご経験があり、ファンドレイザーとしての経験は浅いものの、「すべてがファンドレイジングにつながる」「どんな経歴でもファンドレイザーになれる」というまとめが印象的でした。
また、学ぶだけでは息が詰まってしまう。楽しみましょう!と来場者に呼びかけました。
バズセッション
残りの時間で近くの人と「大学ファンドレイジング」について話をしました。私のグループでは、今回の発表者の所属大学は比較的大きくてまた知名度の高い大学であることから、もう少し小規模の大学・教育機関では人員を割けず兼務者が多い実態をどう好転したら良いだろうか、と話題になりました。
会場からのフィードバックの時間では、プロパー職員でファンドレイザーの専門職を磨くのが良いか、または外部から専門職のファンドレイザーを呼ぶのが良いのか、と議論になりました。
あるプロパー職員の方からは「特にスピード感でカルチャーギャップを感じた」との発言がありました。
私は専門職ファンドレイザーを呼び込むショック療法(!?)に加えて、長い目で考えるとプロパー職員を専門職として教育する、このどちらも大事なことだと思いました。
また参加者から、「すでにNPOで活躍しているファンドレイザーが次の職場として大学を選ぶケースはどうですか?」と質問がありました。NPO経験のある高橋さんから、「NPOは外部向けのプロモーションがメイン(知名度がない、という前提)だが、大学は既に知名度があり、寄付者との関係性をより深めることがメインとなる。注力するフィールドは違えど、NPO経験者も転職先として大学を選ぶのは環境として良いと思いますよ。」とのことでした。
70分のセッションはあっという間に終了。常に笑いの絶えない和やかな雰囲気のセッションでした。三者三様ながら、大学ファンドレイザーの醍醐味を魅力的に伝え、もっと大学ファンドレイザーの認知度アップを図る必要性を感じました。