舞台「CHIMERICA」を観ました
高校時代を過ごした1990年前後は、思い返すと激動の数年だった。
ニュースで流れる映像には今では考えられないようなショッキングなものもあったためか、強く記憶に残っている。
ベルリンの壁崩壊、ルーマニアのチャウシェスク政権崩壊そして公開処刑、ユーゴスラビア内戦。昨年の夏に訪れたエストニアがソ連から独立したのもこの頃。
そして、天安門事件。実際の事件が起きたのは1989年6月。
天安門で繰り広げられた、自分より少し上の年齢の大学生による抗議行動。無情にも抗議行動を続ける学生たちがいるテントを踏み潰す戦車。そして、戦車の行く手を阻む青年の姿。
今回観たのは、天安門事件に居合わせた18歳の米国人ジョーが戦車の前に立つ男を写した1枚の写真を巡るお話。『戦車男=タンクマン』の軌跡を追う中で、事件当時の1989年と、23年後のニューヨーク2012年を行ったり来たり。ジョーと中国人の友人ヂァン・リンが物語の中心となり、話が展開していく。
・・・などともっともらしく書いているが、主演の田中圭さんの舞台と観てみたい、という邪まな気持ちでチケットを申し込んだ。
場所は世田谷パブリックシアター。
私は前売りでチケットを購入していたが、当日券を求める列ができていて驚いた。さらに立見席も。立見!1回の休憩を挟んで3時間ほど立って観る、ということ。もはや自分には無理・・・人気ある舞台だったよう(納得)。
舞台を観に行く数日前に、仕事中に耳の聴こえに違和感を感じた。
「低音障害ですね」
耳の中で浮腫んでいるらしい。納得。何かが耳の中で塞がれているような、音を聴くことができるがずっと何かが耳を塞いでいるような違和感。
観劇中に時折耳がぼやーんとしてセリフが聴こえにくいことがあったが、ストーリー展開に惹きこまれ、途中で耳のことを忘れるほど。
主人公は、天安門事件の日に中国のホテルの窓から戦車を止める男性の写真を撮った米国人ジョー。
1989年の中国と、2012年のアメリカ、2つの時代と国を行ったり来たりする話のため、場面転換がとても多かった。展開時に幕が下りて来たり、中央の四角形の舞台を回転させたりと、転換時の間延びを感じさせないような工夫がなされていた。
主人公役の田中圭さん。ちょっと頼りない、でも過去へのこだわりを捨てられない主人公役を好演していた。途中のベッドシーン明けの服を着るシーンで、良い体がチラリと見えたのも良かった(ミーハー)。
そして何より、友人役の満島真之介さんの演技。23年間、事件に翻弄され続けてきた一人の中国人の人生を見事に演じていた。肉体的にも精神的にも苦悩している様子、毎回、こんな演技をしているのは相当ハードだろうな、と素人目にも思った。出演作、これからは注目して行きます!
社会的テーマで重い内容ではあったが、久しぶりに生の舞台を見て、「演劇を観るのは楽しいな」と観劇しきり。今年は観劇の回数を増やしていこう。